ポリプテルスという魚種をご存知でしょうか。4億年以上前からほとんど姿を変えずに生存してきた、生きた化石といえる種です。ペットショップのアクアリウムコーナーを巡ることがある方ならばポリプテルスという魚種を見たことがあるかと存じます。
そのなかで小型種に分類され、飼育の入門種とされるのがポリプテルスセネガルスです。サンショウウオのような両生類っぽい顔つきと背中に小さなヒレ並んでいるのが特徴的です。胸鰭をパタパタ動かしてフラフラと泳ぐ姿がとても可愛らしいです。野生下ではアフリカに分布しており、現地で採取されたもの(流通量は少ない)や東南アジアで繁殖されているもの(ホームセンターのペットコーナーにも並んでいる)が流通しています。
本記事は2021年8月9日より飼育を開始した小型古代魚 ポリプテルスセネガルス の単独飼育の状況を書き留めるものです。折角買うのだから末永くお付き合いするために、どのように飼育してきたか残しておこうという意図があります。アクアリウムをはじめて日が浅いですが、ここに書き留めた内容がアクアリウムをはじめる、継続する何等かの役に立てば幸いです
飼育設備
水槽:GEX マリーナ600BKS(w60cm×d27.5cm×h36cm 水量51L)
フィルター:デュアルクリーン600sp(上部フィルター)
エアレーション:GEXサイレントフォース2000S(吐出量2.0L/分)
エアストーン:いぶきエアストーン セラミックエアストーン 直径30×150BL #100
照明:GEX クリア LED POWER X 600
温調:ヒーター、サーモスタット、エアコン(水温は26±1℃になるよう調整)
ベアタンク(水槽底面に砂利を敷かない)で飼育しています。砂利を敷くことで生体を落ち着かせる効果と硝化細菌(生体の排泄物を分解する)の住処となりうるのですが、病原菌の温床にもなりうるので、それを予防するベアタンクを選択します。マリーナ600BKS水槽は底面が黒色のプラスチックになっているので、照り返しを軽減してストレスを緩和することを狙っています。また60cmレギュラーサイズの水槽と比較して水量は少なめなのでポリプテルスセネガルス一匹の単独飼育とします。
フィルターは飼育水へ酸素を溶け込ませやすく(硝化細菌の活性を促すので濾過能力は高いとされる)、メンテナンスも容易とされる上部式フィルターを選択。落水口にポリプテルスが侵入して事故死することを予防するため付属のエルボを接続します。水槽の上半分を覆うので、残り半分をガラス蓋で覆えば飛び出し事故を防げるはず。
エアレーションは水面を揺らして硝化細菌の活性を促すこと、水槽内の飼育水に淀みをなくすことを目的として導入。エアポンプは静音能力の高いとされるものを選択(水槽はリビングに設置するので)。
照明は鑑賞性の向上と、生体に昼夜のサイクルを感じさせるための処置。水槽フランジの上に乗せるタイプのものでデザイン重視で製品選択。コケの発生を抑制したいがために点灯時間を6時間と短めに設定しています。
ヒーターは生体が接触することで火傷することを防ぐためにカバー付属のものを選択。
また、ポリプテルスは夜行性で、野生下では日中(照明点灯時間)物陰に潜んでいるそうなので、そういった場所を設けるかたちで大き目の塩ビ配管を沈ませました。
給餌
餌は2,3日に1回の頻度で与えます。量の目安として、1回あたり人工飼料(グロウF沈降性)を3~5粒、おやつ程度に乾燥川エビを3~5匹です。糞の状態を確認して量を増減させます。食べすぎやストレスで消化不良を起こさせると取り返しのつかないことになりかねないので糞の色や量に気を使います。過去経験やネットの情報から、白っぽい糞は消化不良と判断し、それを確認した場合は3日空けて給餌量を減らして様子見します。また、与えた餌に対してどんな糞をしたかを確認したいので、見つけたらスポイトで吸い出し除去します。
水換え頻度
アクアリウム業界で目安とされる、1週間に1回のペースで、飼育水全量の1/3程度を交換します。その他、販売元推奨に則り、上部フィルターのウールマットは月1回、活性炭は2ヵ月に1回のペースで更新します。上部フィルターに搭載する濾過材は2つに分けて、それぞれ別の時期に、1年に一回だけ飼育水で濯ぎます。濯ぐ期間をずらすのは濾過材に付着する硝化細菌などのバクテリアの減少を抑え、濯ぐことで減少したバクテリアが再繁殖して量が戻るまでの期間を短くするためです。また、水換え後もバクテリアが減少しますので、それを補充するために小次郎526EXという水質浄化バクテリア液をペットボトルのキャップ2杯分(12mLほど)多めに補充します(基本は100Lにつき20mlです)。
水質
水質はpH6.5~7.5の中性で軟水を好むとされています。
日本の水道水の水質基準ならば、カルキを抜いてしまえば好ましい水質になるのでそれを基準とします。
そこから給餌により酸性に傾くであろうpHの変動を緩和するために、リバースグレインソフト6.8というイオン(pHや水の硬度に影響を与えるもの)を吸着する濾過材を導入します。これにより総硬度は0°dHと測定下限値となるようですが、同様に管理しているの25cm水槽で飼育しているミナミヌマエビも問題なく維持、繁殖できているので問題なし としています。
ポリプテルスセネガルスをお迎えしてから約4週間の水質変動状況です。水質確認にはテトラ6in1をとテトラの水質管理アプリを使用しています。
お迎え2週目にしてNO2が高めの値を示しています。この段階では供給される餌とポリプテルスからの排泄物を分解するだけの十分なバクテリアが定着していなったのかもしれません。3週目で落ち着いたのでまずは一安心です。ここで何故か不明ですが常にCO2が高い状態になっています。もしかすると小次郎526EXは水質浄化の過程で多量にCO2を排出しているのかもしれません。ちなみにお迎えした個体はcharmさんで購入しました。ワイルド個体でサイズが20cm程度と体力面で安心できるかなと。人工飼料での餌付けが難しいかとしばしの間は冷凍アカムシ給餌を覚悟していましたが、お迎え1日後の初給餌から人工飼料(charmさんではグロウF沈降性を与えていると記載があったので同時購入していました)を食べてくれたので、とても安心しました。ワイルドならばほぼ100%ついているとされるポリプテルス特有の寄生虫も、体を何かに擦り付けるような仕草が見られないため駆除済みかと思われます。大当たりな個体をいただき ありがとうございます。
今後の方針
現状は消化不良がかなり怖いので餌を控えめに与えています。供給量が足りないためか餌をねだるような動きも見せるようになりました。ですが成魚といえるサイズの個体で、飢えに強い品種(4週間程度の絶食も耐える)なので明らかに痩せてこない限りは給餌の量、頻度は現状維持とします。
水質は検査する限りでは飼育水を浄化するサイクルは働いている模様ですが、水換え後の排泄はいまのところ必ず白い糞をします。水道水は飼育水よりもpHが高めなのでそれがストレスなのかもしれませんが、pH調整できる設備はないので交換水量を25%くらいに減らします。また、これまでは水槽を設置した場所からバケツから水を入れるのが困難なのでホースをつかって水道水を直接入れると同時に液体カルキ抜きをいれるという推奨されない手段をとっていたのですが、カルキを抜いた水道水をバケツに用意してサイフォンの原理を用いて入れることとします。交換水量や新水の導入方法は、それなりに上手くいっていると感じている25cm水槽の水換え方法をできるだけ真似て様子見しようという算段です。
さらに、照明の点灯時間を8時間に延長します。CO2が多いならば、光が当たる時間を長くすることでミクロソリウム(25cm水槽で増えたもので、水質浄化の気休め程度になるかなと投入してみました)の成長が促せるかもしれないかなと。増えるであろうコケはポリプテルスセネガルスと同居しているフネアマガイに食べてもらいます。
補足
ポリプテルスセネガルス:起源はデボン紀ともいわれる程の古代よりほとんど形態が変化していない魚類の生き残りです。現在はアフリカの淡水域にのみ生息しています。
ポリプテルス(Polypterus)は、「多くの(Poly)ひれ(pterus)」という名前の由来のとおり、背中に小離鰭(しょうりき)と呼ばれるひし形のひれが10枚程度あります。体長は30cm前後から100cm程度と、小型から大型になる種まで存在します。種により小離鰭の数も異なります。本記事で紹介する種はポリプテルスセネガルスです。野生では全長50cm程に達するそうですが、飼育下では30cm程度までで成長が止まってしまうことがほとんどなので、60cmレギュラーサイズ以上の水槽ならば終生飼育可能とされます。飼育に適した水温は26℃前後。水質はpH6.5~7.5の中性で軟水を好むとされます。食性は肉食で餌はエビやメダカなどの生餌やナマズなどの肉食魚向けの人工飼料が適します。店舗やネットショップなどの入手先より与えている餌の情報を参考にするのが無難かと存じます。外見は写真のようになります。あくまで一例で、個体差はあると思いますが、ブリード個体は丸みのある体形をしており、ワイルド産はブリード個体が全体的に延ばされて細くなったような体形をしています。
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%97%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%B9
あとがき
2019年の4月より同じ品種のポリプテルスを飼育していました。10年以上飼育できている例も珍しくない品種なのですが、2年半も経たずに死なせてしましました。死因は餌の消化不良および排泄ができないことによる内蔵圧迫かと予想しています。根拠は死骸の腹部が異常といえるまでに膨張していたこと、そして3か月以上の期間中にまったく糞を確認できなかったことにあります。飼育開始当初から餌を吐き戻したり、白く透けた糞をすることがあったので、改善すべく一定期間の絶食も試みましたが効果はなさそうでした。消化器系が弱い個体だったのかもしれません。いずれにせよその個体に適した飼育をできなかったことは事実です。それでもポリプテルスセネガルスという品種に魅せられてしまったので、長く付き合いたいという欲を満たすために飼育を試み続けて給餌や飼育設備メンテナンス状況などを記録、蓄積するのが本記事の狙いです。
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