60cm水槽を立ち上げ

アクアリウム初心者によくおススメされる水槽が60cmレギュラーサイズの水槽です。なぜおススメされるのかというと、入れれる水の容量が50L以上と大きいので水質の変化が緩やかだからとされています。50L=50kg(日本人女性と同程度の重さ)の水量を扱うのは大変そうだと想像するかと思いますが、適切な手順を踏めば維持管理は容易かと思います。

本記事は60cm水槽を設置してからの過程になります。立ち上げるまでに どんな作業を実施したか、そして立ち上げ後の維持管理にどんなことを実施しているかの経験談を書きます。これからアクアリウムを始めようとご検討中の あなた の参考になれば幸いです。

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立ち上げ

水槽を設置して水も張り終えたからといって、すぐに生体を飼育できる環境ができたとはいえません。生体が呼吸するに必要な水を、生体が生存できる状態に維持する仕組みを立ち上げなければ長期的な飼育は難しいです。

生体は生きていくのに食事と排泄は必須事項です。食事での食べ残しや、食べて消化されて出てきた排泄物は放置されると腐敗して、生体を殺しかねない毒が水中に溶け出します。腐敗は水中に存在する細菌類(バクテリア)が排泄物などを栄養源として分解する過程で発生するのですが、分解の過程で生体にとって毒となる物質が生成されます。その毒を栄養源とするバクテリアも水中に存在していれば、毒を生体にとって無害なものや、植物にとっての栄養源に分解できます。上記のような、生体から消化分解されて でてきたもの をさらに消化分解できる生体(細菌類)が存在して・・・といった、下水処理場の浄化サイクルのような環境を作り出せれば生体の長期維持が可能になります。水槽にこの浄化サイクルを成立させるためには、排泄物を最終的に無毒なものに分解できるバクテリア類を発生、増殖させればOKです。ここで、立ち上げ初期の水を張っただけの水槽にはバクテリアはほとんど存在しておらず、増殖するために必要な栄養源も足りていない状況です。よって、まずは毒が溶け込んでいるような汚れた水に比較的強い生体を数匹だけ立ち上げ初期水槽に導入し、餌も少量に控えて与えて水を徐々に汚していき、汚れ成分を栄養とするバクテリア類が発生、増殖するのを待ちます。

私の場合は50L弱の水量に対してネオンテトラを3匹導入し、酸素を水に溶け込ませやすい上部フィルターにバクテリアの住処となる ろ材 を追加購入して増量させて浄化サイクルの立ち上がりを図りました。

生体も生命維持の過程で必要な栄養源やそれを消化分解して排出される物質も、構成元素のほとんどが炭素(元素記号:C)、水素(元素記号:H)、酸素(元素記号:O)、窒素(元素記号:N)です。これら(生体は死骸になってから)はバクテリアによる浄化サイクルによって、NH3(毒)→NO2-(弱い毒)→NO3-(ほぼ無害なくらいの毒)と分解されます。その過程でH2O(水)とH+(水素イオン)が発生します。H+は多くなるとpHが下がってきます。つまり生体に餌を与えていてもNO2-が水質検査で検出されないこと、そしてpHが下がる傾向が見えれば浄化サイクルが出来上がっている状態になったと推定できます。下記画像は浄化サイクルを立ちあがるまで水質調査した記録です。週1回ペースで20L程度の水換えを行っており、水質検査は水換え後6日以上経過してから実施しました。大量の水に対して生体が少数で微量の餌しか与えていないのでNO2-はずっと検出されない状況ですが、pHは少しずつ下がっていることが見て取れ、立ち上げから35日でpHが検出下限になっています。ここで浄化サイクルが立ち上がっていると判断し、下がり続けるpHを7付近に留めるために、リバースグレイン(余分なH+を吸着してpHを6.8付近にするろ材)やサンゴ砂(pHを上昇させるイオンを溶出させる砂)などを導入しました。

NO3-の除去は基本的に水換えで行います。NH3からNO3-まで分解するバクテリア類は酸素を好むバクテリアが担います。NO3-を分解できるバクテリアは酸素を嫌うバクテリアで、酸素を好むバクテリアと共存させることは難しいです。嫌気性バクテリアには、毒性の強いH2S(硫化水素)を発生させる種類もいるため、生体を長期的に飼育管理するには、酸素が届かないような嫌気性バクテリアが発生しにくい環境を維持することがより良いと考えます。ちなみに水草の寄せ植えは生ごみのような嫌な臭いが発生したため撤去しました。

ここまでくれば、お好みの生体を少しずつ導入し、都度水質管理を続けて生体から出る排出物の量と浄化サイクルを担うバクテリアの量の均衡を図っていけばアクアリウムを長期的に楽しめる環境を維持できるはずです。

維持管理

アクアリウムの管理とは、生体が生存しやすい水質を維持することだと考えますが、前項の浄化サイクルでは必ず水換えをしなければいけないです。50L以上の容量となる60cm水槽の水換えとなると大変そうな印象を持ちますが、水換えをするのに適した道具を揃えてしまえば面倒と感じるかもしれませんが身体的に苦痛と感じるような難儀な作業ではないです。水を抜く作業については、水槽が床よりも高い位置にあるならば水位の高低差を利用した手動ポンプを2~5回プッシュすればあとは水位差がなくなるまで勝手に排出されます(仮に高低差がなくてもプッシュしつづければ水は排出できます)し、全部の水を抜くわけではなく、総水量の2/3程度を抜けばOKです。NO3-が溜まった水槽の水(飼育水)を抜くのと同時にバクテリアも水ごと除去してしまうことになるますし、飼育水と新しく追加する水とでは水温やpHといった水質が異なる可能性があるためです。生体は急激な水質変化がストレスになり、弱ってしまう原因になります。これらから60cm水槽ならば20L以下の水を交換すればOKということになります。20Lといっても小学生が掃除などで扱うバケツ2杯分程度の量です。新しい水は直接バケツなど上から注げばOKです。水槽壁面に付着したコケなどを拭い取ったりといった作業を除いた水換えだけの作業ならば30分もかからず実施できるかと思います。

私は60cm水槽(GEX マリーナ600BKS)でポリプテルスセネガルスという小型の肉食魚を飼育しています(幼体から育てる自信はなかったので体長15cm程度のある程度成長した個体を購入しました)。マリーナ600BKSは、60×27.5×高さ36cmと奥行方向がレギュラーサイズの60cm水槽よりも2.5cm短くて50L程度の容量のガラス製の水槽です。底面はガラスではなく黒色のプラスチック製なので、砂利などを敷かずに水を張っても鏡のように反射しないことが利点かと思います。

 日々の管理として、上記の手順で水換えを1週間に1回20L程度を実施(コケとりは気になったときに その都度)しています。餌については、お迎え当初はひかりクレストミニキャットを毎日1回10粒のペースで与えていました。残念ながら消化器系に何か疾患があるためか、消化できずに吐瀉したり、腹が膨れた状態で2~3日糞詰まり(長い時には4週間以上)を起こしたりするので、最近は状況により糞をしたことを確認できてからミニキャット5~8粒程度を与えています。水質浄化バクテリアを試したり、リバースグレインを導入して軟水にしつつpHの変動を抑えたり(上記水質記録画像の15日目程度の水質になるよう調整)とかなり生命維持に気を付けているつもりなのですが、改善の糸口がつかめずにいます。

余談ですが、立ち上げ当初から1年程度はエアレーションにフィッシュレットを使用していました。上記から、糞よりも吐き出した餌の回収に役立ってくれたのですが、3日に1回のペースで分解していたせいか、エアーの吹き出し部品が緩くなってうまくプロペラが回らなくなってしまいました。また、単独飼育で糞も少量で、それならスポイトで吸い出したほうが作業時間は短くなることから、いぶきエアストーンに変更しました。水流ができて、流木(水槽アクセサリ)の隙間などの弱い箇所にゴミが集まるようになったので、糞除去の時間は5分もかかりません。

追記として、21.8.3の早朝に ポリプテルスセネガルス がお亡くなりになっていることを確認しました。排泄ができなくなってから約3か月持ち堪えました。最後は頭部以外が不自然に膨らんでおり、常に息が荒かったです。どうしてこうなったかの原因究明したく、素人ながら割腹して胃腸の中身をみた結果として、口にしたものはほぼ消化されており、消化できていなさそうなものは出てきませんでした。何かを誤飲したのではないようです。また、割腹の際に糞よりも先に多量の体液?と思われる薄茶色の液体が噴き出てきました。結局は原因不明のままです。

本記事はアクアリウム関連のyoutubeやサイトの情報を基に初心者ながらに60cm水槽を立ち上げた経験談です。危険で避けるべき作業やもっとこうすれば良いなど改善点は多々あるかと存じます。お気づきの点がありましたらご連絡いただけますと幸いです。

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